妊婦健診の血液検査|検査項目・実施時期・費用を産婦人科医がやさしく解説|港区田町駅西口の婦人科|しばウィメンズクリニック

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妊婦健診の血液検査|検査項目・実施時期・費用を産婦人科医がやさしく解説

妊婦健診の血液検査|検査項目・実施時期・費用を産婦人科医がやさしく解説|港区田町駅西口の婦人科|しばウィメンズクリニック

2026年7月24日

妊婦健診の血液検査|検査項目・実施時期・費用を産婦人科医がやさしく解説

妊婦健診で行う血液検査について、不安や疑問を感じていませんか。 「採血が苦手だから怖い」「補助券で全部カバーされるのか」「もし陽性が出たら赤ちゃんはどうなるのか」――妊娠初期にこうした不安を抱える方は少なくありません。本記事では、しばウィメンズクリニック 岡本 英恵 医師の監修のもと、日本産科婦人科学会『産婦人科診療ガイドライン-産科編2023』および厚生労働省『妊婦に対する健康診査についての望ましい基準』に基づき、妊婦健診の血液検査の項目・目的・実施時期・費用補助・結果の見方までを一つひとつ整理して解説します。 読み終える頃には、次回の健診で「何を、なぜ調べているのか」がはっきりイメージでき、不安を和らげ、落ち着いて検査に臨むための具体的なイメージをつかむことができます。

妊娠時期ごとの主な血液検査項目の流れ(初期・中期・後期)

妊婦健診で血液検査が必要な理由

妊婦健診で血液検査が複数回行われるのは、母体と赤ちゃんの健康状態を「目に見える数値」として継続的にモニタリングするためです。妊娠中は循環血液量や代謝が大きく変化し、感染症の有無や貧血の進行が母子双方のリスクに直結します。だからこそ、初期・中期・後期で必要な検査を組み合わせ、変化の兆しを早期に捉える仕組みが整えられています。

日本産科婦人科学会によれば、妊娠初期の血液検査は「母児のリスクを総合的に評価し、その後の妊娠管理方針を決めるための基礎情報」と位置づけられます。検査結果は単発の数値ではなく、妊娠週数とセットで意味を持つ点が特徴です。

血液検査でわかること(母体と赤ちゃんの健康チェック)

妊婦健診の血液検査では、母体の貧血・血糖・肝機能などの全身状態に加え、赤ちゃんへの垂直感染リスクがある感染症(B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒、風疹、HTLV-1など)を一括して確認します。

たとえば貧血は、妊娠後期になるほど循環血液量の増加に伴い見かけ上のヘモグロビン値が下がりやすく、放置すれば分娩時の出血リスクや産後の体力回復にも影響する可能性があります。一方、B型肝炎ウイルスや風疹抗体価の確認は、出生児へのワクチン投与やフォロー方針を決定するうえで欠かせません。 このように、血液検査は「お母さんの体調管理」と「赤ちゃんを守る準備」の両方を兼ねた重要なステップだと言えます。

なぜ妊娠中に複数回採血するのか

妊娠中に複数回採血するのは、リスクが時期によって変化するためです。 妊娠初期は感染症や血液型の確認が中心となり、中期以降は妊娠糖尿病や貧血の進行、後期では分娩に向けた最終チェック(後期貧血・血小板・GBS等)が加わります。1回の採血で「妊娠期間中ずっと問題ない」と判断することはできず、各時期に応じたタイミングで再評価する必要があります。

厚生労働省のガイドラインでも、妊娠期間を通じて計14回程度の健診を受けることが推奨されており、そのうち複数回で血液検査が組み込まれています。採血量についても1回あたり数mL〜十数mL程度であり、母体の循環血液量から見ればごく少量です。「採血で貧血が悪化するのではないか」と心配される方もいますが、通常の採血量であれば、それによって貧血が引き起こされたり悪化したりすることは原則としてありません。

妊婦健診の血液検査スケジュール(初期・中期・後期)

妊婦健診における血液検査の基本スケジュールは、おおよそ次の3段階に整理できます。

まず、妊娠初期(〜12週前後)に行う「初回血液検査」では、血液型や不規則抗体、血算、血糖、各種感染症スクリーニング(梅毒、HBs抗原、HCV抗体、HIV、風疹抗体価、HTLV-1抗体)などをまとめて確認します。 次に、妊娠中期(24〜28週前後)には、妊娠糖尿病スクリーニング(50gGCTや75gOGTT)や貧血の再評価を実施します。 *そして、妊娠後期(35〜37週前後)に行う「分娩前検査」において、貧血や血小板の再確認、GBS(B群溶血性連鎖球菌)検査などを組み合わせます。

なお、施設や妊娠経過によって追加項目や実施週数は前後する可能性があります。気になる点がある場合は、健診時に医師にご相談ください。

妊婦健診の血液検査スケジュール(初期・中期・後期)

妊婦健診の血液検査の項目一覧【12項目以上】

妊婦健診で行う血液検査は、産婦人科診療ガイドラインや国・自治体の標準的な健診メニューに基づいて構成されています。検査項目はおおむね12項目以上にわたり、母体の全身状態を確認するもの(血算や血糖など)と、母子感染リスクを評価するもの(HBs抗原、HCV抗体、HIV、梅毒、風疹、HTLV-1など)に大別されます。

ここでは全体像を把握するため、主要な検査項目を一覧で整理します。それぞれの詳しい内容については後述の各セクションをご確認ください。

検査項目早見表(時期・目的・公費補助の有無)

代表的な血液検査項目について、実施時期、目的、および公費補助の対象になりやすいかどうかをまとめました。

検査項目 主な実施時期 主な目的 公費補助の目安
血液型(ABO・Rh式) 妊娠初期 輸血準備・新生児溶血性疾患の予防 対象になりやすい
不規則抗体 妊娠初期 新生児溶血性疾患のリスク評価 対象になりやすい
血算(Hb・Ht・血小板・白血球数) 初期・中期・後期 貧血・感染・血小板異常の評価 対象になりやすい
血糖(随時血糖・GCT) 初期・中期 妊娠糖尿病スクリーニング 一部公費の対象
75gOGTT 中期 妊娠糖尿病の確定診断 自費(保険適用)の場合あり
梅毒(STS・TPHA) 妊娠初期 母子感染(先天梅毒)の予防 対象になりやすい
HBs抗原 妊娠初期 B型肝炎の母子感染予防 対象になりやすい
HCV抗体 妊娠初期 C型肝炎の有無の確認 対象になりやすい
HIV抗体 妊娠初期 HIVの母子感染予防 対象になりやすい
風疹抗体価(HI法) 妊娠初期 先天性風疹症候群の予防 対象になりやすい
HTLV-1抗体 妊娠初期 母乳感染リスクの評価 対象になりやすい
トキソプラズスタ抗体 任意(希望者) 胎児への感染リスクの評価 原則として自費
子宮頸部クラミジア 初期〜中期 早産・新生児感染の予防 一部公費の対象
GBS(B群溶血性連鎖球菌) 妊娠後期 新生児GBS感染症の予防 一部公費の対象

※実際にどの項目がどの程度カバーされるかは、お住まいの自治体や受診する医療機関の料金設定によって異なります。詳細な利用範囲については、自治体の案内や医療機関の窓口でご確認ください。

検査項目はどのように決まっているのか(厚労省・産科ガイドライン準拠)

妊婦健診における血液検査の項目は医療機関が独自に決めているわけではなく、国の指針と学会のガイドラインに準拠しています。

厚生労働省は『妊婦に対する健康診査についての望ましい基準』において、標準的に実施すべき検査項目と適切な時期の目安を示しています。また、日本産科婦人科学会の『産婦人科診療ガイドライン-産科編2023』では、これらの検査で陽性となった場合の具体的なフォローアップ体制や医療連携の手順が細かく定められています。各自治体はこれらの指針に基づいて妊婦健康診査受診票(公費補助券)の助成対象を設計しているため、医療機関によって検査項目が大きく異なることは原則としてありません。

ただし、トキソプラズマ抗体やサイトメガロウイルス抗体といった任意項目については、妊婦さんの希望や個別の生活環境に応じて追加されます。これらは公費助成の対象外(全額自費)となるケースが多いため、事前に費用や検査の必要性について医師と相談しておくと安心です。

【妊娠初期】に行う血液検査の目的と内容

妊娠初期の血液検査は、妊娠経過全体を安全に管理していくための重要な土台となります。一度の採血で多くの項目を調べるのは、母体と赤ちゃんに関わるリスク要因を早期に把握し、その後の診療方針(経過観察、追加の精密検査、専門医療機関との連携など)を最適に組み立てるためです。初期に実施される主な検査内容について解説します。

血液型・Rh式血液型・不規則抗体検査

妊娠初期の血液型検査は、万が一分娩時などに輸血が必要となった場合に備えること、そして新生児溶血性疾患のリスクを事前に評価することが目的です。 ABO血液型だけでなく、Rh式血液型(陽性・陰性)や、予期せぬ抗体を持っていないかを確認する「不規則抗体」の有無を調べます。日本人においてRhD陰性の方は約0.5%と比較的まれですが、お母さんがRh陰性で赤ちゃんがRh陽性の場合、母体の中で赤ちゃんに対する抗体が作られ、次回の妊娠や赤ちゃんの健康に影響を及ぼすことがあります。不規則抗体が検出された場合は、原因となる抗体を詳しく特定し、適切な管理体制を整えていきます。

血算(貧血・血小板)

血算(けっさん)は、ヘモグロビン(Hb)値、ヘマトクリット(Ht)値、白血球数、血小板数などを一括して測定する基本的な検査です。 妊娠初期の段階で重度の貧血や血小板の減少がないかを確認しておくことは、その後の妊娠経過や分娩時の出血リスクを予測するうえで非常に重要です。妊娠中期から後期にかけては、赤血球の増加に対して水分(血漿成分)がより大きく増えるため、血液が希釈されて見かけ上のヘモグロビン値が低下しやすくなります。初期の基準となる数値を把握しておくことで、その後の変化が妊娠に伴う生理的なゆらぎなのか、治療を要する貧血の進行なのかを正確に見極めることができます。

血糖検査(随時血糖・GCT)

血糖検査は、妊娠糖尿病のリスクを早期に発見するために行われます。 妊娠初期には随時血糖や空腹時血糖が測定され、基準値を超えた場合は確定診断のために75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)へと進みます。妊娠糖尿病は自覚症状に乏しいことが多いため、初期の段階から正確なスクリーニングを行うことが、母児の合併症リスクを抑えるために重要となります。特に肥満傾向のある方や、ご家族に糖尿病の既往がある方の場合は、初期段階からより慎量な評価が行われます。

梅毒血清反応(STS・TPHA)

梅毒血清反応は、母体が梅毒に感染しているかどうかを調べるための重要な検査です。 妊娠中に梅毒の感染が放置されると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染し、先天梅毒や流産・早産の原因となる恐れがあります。検査では、現在進行形の感染を捉えるSTSと、過去の感染歴も含めて捉えるTPHAという2つの方法を組み合わせ、正確に判定を行います。万が一陽性となった場合でも、妊娠中の適切な時期に抗菌薬による治療を開始することで、赤ちゃんへの感染リスクを大幅に下げることができます。

B型肝炎ウイルス抗原(HBs抗原)

HBs抗原検査は、お母さんがB型肝炎ウイルス(HBV)を保有しているかどうかを確認するための検査です。 お母さんがHBVのキャリアである場合、出産の際(産道を通る時など)に赤ちゃんへウイルスが感染するリスクが生じます。現在では、関係学会のガイドラインや公的な母子感染予防プログラムに基づき、赤ちゃんが生まれた直後からB型肝炎ワクチンと抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を適切に投与する医療体制が確立されています。これにより、赤ちゃんへの感染を高確率で防ぐことができるため、初期段階での正確な確認が欠かせません。

C型肝炎ウイルス抗体(HCV抗体)

HCV抗体検査は、C型肝炎ウイルス(HCV)への感染の有無を調べるための検査です。 C型肝炎の母子感染率はB型肝炎に比べると低いとされていますが、適切な管理を行うために事前に把握しておく必要があります。HCV抗体が陽性となった場合は、さらに踏み込んでウイルスの実数を測るHCV-RNA検査を行い、現在もウイルスが活動しているかを確認します。妊娠中の治療には一定の制約があるため、必要に応じて消化器内科や肝臓の専門医と密に連携しながら、安全な分娩計画を立てていきます。

HIV抗体検査

HIV抗体検査は、エイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)への感染を早期に把握し、赤ちゃんへの感染を未然に防ぐために行われます。 医療的介入がない場合、母子感染は妊娠中、分娩時、あるいは授乳を通じて起こる可能性があります。しかし、妊娠中の適切な時期から抗ウイルス薬の内服を開始し、計画的な分娩方法の選択や人工乳による栄養管理を組み合わせることで、赤ちゃんへの感染リスクを極めて低いレベルまで抑えることが可能であると実証されています。陽性と判定された場合でも、専門の感染症内科と産婦人科がシームレスに連携し、安全な出産をサポートする体制が整っています。

風疹ウイルス抗体価(HI法)

風疹抗体価検査は、お母さんが風疹ウイルスに対する十分な免疫(抗体)を持っているかを確認するための検査です。 妊娠初期(特に20週頃まで)に風疹ウイルスに感染すると、赤ちゃんに難聴や心疾患、白内障などを引き起こす「先天性風疹症候群(CRS)」のリスクが高まることが知られています。HI法による測定で抗体価が16倍以下(あるいは32倍未満)と判定された場合は、免疫が不十分である可能性があるため、人混みを避けるなどの徹底した感染予防策が必要となります。妊娠中は生ワクチンである風疹ワクチンの接種ができないため、抗体価が低かった方は、出産後の速やかなタイミングでのワクチン接種が推奨されます。

HTLV-1抗体検査

HTLV-1抗体検査は、成人T細胞白血病(ATL)などの原因となる「ヒトT細胞白血病ウイルス1型」への感染の有無を調べる検査です。 このウイルスは主に母乳を介して赤ちゃんに感染するリスクがあるため、陽性が確認された場合は、完全人工乳への切り替えや、短期授乳、凍結母乳の活用など、感染リスクを最小限に抑えるための授乳方法について医師や助産師から丁寧な説明が行われます。陽性であっても生涯にわたり発症しない方が大半ですので、過度に悲観せず、赤ちゃんにとって最も安全な育児環境を一緒に考えていくことが大切です。

トキソプラズマ抗体検査(任意項目)

トキソプラズマ抗体検査は、加熱不十分な肉類の摂取や、土いじり、猫の糞便などを介して感染する原虫「トキソプラズマ」への感染歴を調べる任意の検査です。 妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すると、赤ちゃんに先天性の障害を引き起こすリスクが指摘されています。この検査は多くの自治体で公費助成の対象外(自費)となるため、ご自身のライフスタイルやペットの飼育状況などを踏まえ、検査を希望される場合は医師や受付へお気軽にご相談ください。

子宮頸部クラミジア検査

子宮頸部クラミジア検査は、性感染症の代表例である「性器クラミジア感染症」の有無を調べるスクリーニングです。本項目は採血ではなく、内診時に子宮頸管の分泌物を擦過して採取しますが、初期の重要な感染症スクリーニングの一環として血液検査と同じタイミングで実施されるのが一般的です。 妊娠中にクラミジア感染が持続すると、流産や早産、前期破水のリスクが高まるほか、出産の際に赤ちゃんの目や肺に感染して結膜炎や肺炎を引き起こす原因となります。陽性と判定された場合は、安全性の高い抗菌薬を服用することで治療が可能であり、ピンポン感染を防げるようパートナーの方も同時に治療を行うことが重要となります。

【妊娠中期・後期】に追加で行う血液検査

妊娠中期や後期にも、血液検査はスケジュールに沿って計画的に追加されます。これは、妊娠の進行に伴って注意すべきリスクの内容が変化していくためです。中期では妊娠糖尿病と貧血の再評価、後期では分娩に向けた最終的な安全チェックが中心となります。

中期の貧血再検査(血算)

妊娠中期(24〜28週前後)には、貧血の進行度を確認するために2回目の血算検査が行われるのが一般的です。 妊娠中期は赤血球の増加以上に血液中の水分量(血漿成分)が増えるため、ヘモグロビン値が見かけ上低下しやすく、鉄欠乏性貧血が顕在化しやすいタイミングであるため、初期の数値と比較しながら、必要に応じて鉄剤の処方や食事指導が行われます。「もともと貧血気味ではなかったのに」と驚かれる方もおられますが、これは妊娠に伴う特有の生理的変化が背景にあるためです。自己判断で市販のサプリメントなどを増量する前に、必ず主治医に相談してください。

50gGCT・75gOGTT(妊娠糖尿病スクリーニング)

妊娠中期の血糖検査は、妊娠糖尿病(GDM)を見逃さないための極めて重要なステップです。 一般的には、まず食事の時間に関わらず実施できる50gGCT(グルコースチャレンジテスト)を行い、そこで基準値を超えた場合に、後日75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行って確定診断を下す流れとなります。妊娠糖尿病と診断された場合でも、適切な食事療法、運動療法、そして必要に応じたインスリン治療を組み合わせることで、母児の合併症リスクを確実に抑えることができます。妊娠中は赤ちゃんの安全を考慮して飲み薬ではなくインスリン注射が第一選択となるため、「インスリンを使うから重症である」というわけではない点も知っておきたいポイントです。

後期の貧血・血小板再検査

妊娠後期(35〜37週前後)にも、三度目となる貧血と血小板数の再評価が行われます。 これは、間近に迫った分娩時の出血に備えるための重要な検査です。出産時にはある程度の出血が生じることが避けられないため、貧血が強かったり、止血に関わる血小板が減少していたりする場合は、より慎重な分娩管理が必要となります。後期の血算結果は、安全な入院・分娩計画(出血量に応じた迅速な対応など)を立てるうえでの重要な指標となります。

GBS(B群溶血性連鎖球菌)検査の位置づけ

GBS検査は、妊娠35〜37週頃に実施される、新生児の重篤な感染症を予防するための重要な検査です。厳密には血液検査ではなく、経腟・経肛門の分泌物を採取する拭い液検査ですが、後期の重要なスクリーニングとして一括して管理されます。 GBSは健康な成人の多くが無症状で保菌している常在菌の一種ですが、出産の際、産道で赤ちゃんに感染すると、新生児敗血症や髄膜炎などの深刻な感染症を引き起こす恐れがあります。事前に陽性と判明した場合には、分娩が始まったタイミングで母体に抗菌薬の点滴を行うことで、赤ちゃんへの感染リスクを極めて低いレベルに抑えることができます。

妊婦健診の血液検査にかかる費用と公費補助(受診票の使い方)

妊婦健診で行われる血液検査の費用は、自治体が交付する「妊婦健康診査受診票(公費補助券)」によって、多くの項目で自己負担が大幅に軽減される仕組みになっています。ただし、自治体ごとに補助の範囲や上限額に違いがあり、一部自己負担が生じるケースもあります。

妊婦健康診査受診票でカバーされる検査範囲

母子健康手帳と一緒に交付される受診票は、標準的な14回分の健診スケジュールに合わせて設計されています。 血液検査に関しては、初期の血液型、血算、血糖、主要な感染症スクリーニング(HBs抗原、HCV抗体、HIV、梅毒、風疹抗体、HTLV-1)、中期の貧血再検査や血糖検査、後期の血算やGBS検査など、医学的に必須とされる標準的な項目が補助の対象に含まれています。ただし、これらは全額が完全に無料になるわけではなく、自治体が定める補助上限額を超えた分については、医療機関の窓口で差額を自己負担として支払う必要があります。

自費になる項目(任意検査の例)

すべての血液検査項目が公費補助の枠内でカバーされるわけではありません。 たとえば、ライフスタイルや希望に応じて追加されるトキソプラズマ抗体やサイトメガロウイルス抗体の検査、初期の甲状腺機能検査(TSH・FT4)、各種の遺伝学的検査などは「任意検査」に位置づけられ、原則として全額自費(自由診療)扱いとなります。検査を希望される場合は、その検査が持つ意味や費用について事前に十分な説明を受け、納得したうえで選択していくことが大切です。

自治体ごとに補助額の違いと確認方法

公費補助の総額や、受診票1枚あたりの助成上限額は、お住まいの市区町村(住民票のある自治体)によって異なります。 東京都港区などの都市部では手厚い補助が設定されているケースが多いですが、地域による運用に多少の差が存在します。詳細な補助内容や上限額については、母子手帳交付時に配布される案内冊子や自治体の公式ホームページに明記されています。また、里帰り出産などで住民票と異なる都道府県の医療機関を受診する場合は、窓口でいったん自費精算した後に、後日お住まいの自治体へ払い戻しを請求する「償還払い」の手続きが必要となるため、事前の確認が重要です。

検査結果の見方と陽性・異常値が出た場合の対応

血液検査の結果は、単独の数値だけで病気の重症度を断定するものではありません。妊娠週数、現在の体調、他の検査データとの組み合わせから総合的に評価されます。万が一、基準値外の数値や陽性の結果が出た場合でも、慌てずに「次にどのような対応をとるべきか」を医師と整理していくことが大切です。

結果用紙の基本的な読み方(基準値レンジの考え方)

血液検査の結果用紙には、項目ごとに一般的な「基準値(基準範囲)」が記載されています。しかし、この基準値はあくまで「健康な成人(非妊娠時)の多くが当てはまる統計的な目安」であり、母体のホルモンや血液量が劇的に変化している妊娠中においては、この範囲から外れることが多々あります。 そのため、結果用紙に「H」や「L」のマークが付いていたとしても、ただちに病的な異常を意味するわけではありません。産婦人科医は妊娠期特有の生理的変化をしっかりと加味したうえで総合的に判定を行っています。

貧血・妊娠糖尿病が指摘されたとき

貧血や妊娠糖尿病が指摘された場合は、適切な生活習慣の見直しと、必要に応じた医学的ケアが開始されます。 鉄欠乏性貧血と診断された場合は、鉄分を多く含む食事へのアプローチとともに、必要に応じて安全性の高い鉄剤が処方されます。妊娠糖尿病と判定された場合は、まずは食後の血糖急上昇を防ぐ食事療法(分割食など)や適度な運動療法から始め、改善が不十分な場合にインスリン療法による確実なコントロールを行います。 ここで重要なのは、異常を指摘されたからといってただちに赤ちゃんへ深刻な影響が及ぶわけではないという点です。早期に状態を把握し、適切な医療管理を継続することで、母児の合併症リスクを大幅に低減させることができます。

HBV・HCV・HIV陽性時の母子感染予防の流れ

B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、HIVのいずれかで陽性反応が出た場合でも、赤ちゃんへの感染(母子感染)を防ぐための確実な医療ルートが確立されています。 HBV陽性のお母さんから生まれる赤ちゃんに対しては、出生直後にB型肝炎ワクチンと抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を適切に投与することで、感染を高確率でブロックできます。HIVに関しても、妊娠中からの適切な抗ウイルス薬の内服、計画的な分娩方法の選択、産後の人工乳保育を組み合わせることで、赤ちゃんへの感染リスクを極めて低いレベルに抑えられることが実証されています。HCVについては、ウイルスの活動性を測りながら、消化器内科や肝臓専門医と連携して安全な周産期管理を行います。

風疹抗体価が低い場合の注意点と次回妊娠前の備え

風疹の抗体価が低い(HI法で16倍以下など)と判明した場合は、妊娠期間中の徹底した感染予防が最優先となります。 妊娠中は生ワクチンである風疹ワクチンの接種ができないため、お母さん自身が人混みを避ける、手洗い・うがいを徹底する、同居しているご家族に風疹ワクチンを接種してもらうといった周囲の協力が不可欠です。出産後は、授乳中であってもワクチンを接種することが可能ですので、次回の妊娠時に赤ちゃんを確実に守るためにも、退院前や産後の早い段階で接種計画について医師に相談しておくと安心です。

HTLV-1陽性時の授乳に関する選択肢

HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)の抗体検査で陽性となった場合、赤ちゃんへの母乳感染リスクを抑えるため、授乳方法についての具体的な選択肢が提示されます。 主な方法としては、完全人工乳、期間を限定する短期母乳栄養(生後3か月未満での離乳)、あるいは母乳を一度凍結させてウイルスを不活化させる凍結母乳などがあります。それぞれの方法のメリットと注意点について医師や助産師から説明を受け、ご家族のライフスタイルに合わせた最適な方法を選んでいきます。陽性であっても生涯にわたり発症しない方が大半であるため、冷静に受け止め、前向きな育児計画を立てていきましょう。

GBS陽性時の分娩時対応

妊娠後期の検査でGBS(B群溶血性連鎖球菌)が陽性と判定された場合、お産(分娩)のタイミングに合わせて母体に抗菌薬の点滴を行う治療方針が標準化されています。 陣痛が始まった段階や、破水が起きたタイミングで、産道での赤ちゃんへの感染を防ぐためにペニシリン系の抗菌薬を定期的に点滴投与します(ペニシリンアレルギーがある場合は別のお薬を使用します)。「陽性だから母乳ができない」「必ず帝王切開になる」というわけではなく、通常の経腟分娩を安全に行うための事前の備えとなります。

妊婦健診の血液検査に関するよくある質問(FAQ)

Q. 採血の量はどれくらいですか/貧血になりませんか

A. 妊婦健診での1回あたりの採血量は、検査項目数によっても前後しますが、おおむね数mL〜十数mL程度です。健康な成人の全身を流れる血液量は約4Lであり、健診での採血量はそのごくわずかな一部にすぎません。そのため、健診の採血が原因で貧血が引き起こされたり悪化したりすることは原則としてありませんので、安心して受けていただけます。採血の際に気分が悪くなりやすい方は、事前にベッドに横になった状態での採血を希望する旨をスタッフへお伝えください。

Q. 食事を抜いていく必要はありますか

A. 通常の妊婦健診で行われる血液検査(初期の感染症スクリーニングなど)や尿検査は、随時での評価を前提としているため、必ずしも空腹で受診する必要はありません。ただし、妊娠中期に行われる75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)など、正確な空腹時血糖の測定が必要な検査に限り、前夜からの絶食指示が出されます。その際は、事前に渡される案内紙の注意事項や時刻の指定を必ず厳格に守って来院してください。

Q. 検査結果が出るまでどれくらいかかりますか

A. 血算(貧血検査)や血糖値などの基本的な項目は、院内検査であれば当日中、あるいは翌日には結果が判明します。一方、血液型や各種感染症のスクリーニング、風疹などの抗体価検査は専門の検査機関へ外部委託することが多いため、確定までに1〜2週間程度を要します。そのため、初回の採血結果は次回の妊婦健診の際にまとめて医師から説明されるのが一般的な流れです。結果を待つ間に不安を感じることもあるかと思いますが、万が一緊急を要する重大な異常が判明した場合には、次回の健診を待たずに医療機関側から速やかに連絡が入る体制となっています。

Q. 結果に異常があったら赤ちゃんに影響しますか

A. 血液検査の結果で基準値を外れたり、何らかの陽性が出たりしたからといって、そのすべてが赤ちゃんに直接的な悪影響を及ぼすわけではありません。軽度の貧血や血糖の境界域の変動であれば、毎日の食事の工夫や適切な医療管理によって十分にコントロールが可能です。また、母子感染のリスクがある感染症が判明した場合でも、現在では確立された予防プログラム(お薬の服用や出生後の赤ちゃんへのワクチン投与など)に沿って対処することで、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えることができます。大切なのは、検査結果の数値だけに捉われて一人で抱え込まず、医師からの詳しい説明を受けたうえで、今後の具体的な管理方針を一つずつ確認していくことです。

Q. 検査を断ることはできますか

A. 妊婦健診における各種の血液検査は強制ではなく、最終的には妊婦さんご自身の同意に基づいて実施されます。一部の任意検査(トキソプラズマ抗体など)については、ご自身の判断で見送ることも可能です。しかし、血液型や主要な感染症スクリーニング(B型肝炎、HIV、梅毒など)は、お産を安全に行うため、そして生まれてくる赤ちゃんの命と健康を確実に守るために、日本産科婦人科学会のガイドラインでも「強く推奨される必須の検査」として位置づけられています。不安や疑問がある場合は、断る前に「なぜこの検査が必要なのか」を医師に直接質問し、十分に納得したうえで受けていただくことが望ましいです。

監修医より:妊婦健診の血液検査を安心して受けるために

妊婦健診で行われる血液検査は、お母さん自身の健康を維持し、お腹の中の赤ちゃんを安全に育み、無事に出産を迎えるためのロードマップとなる大切な情報源です。「注射が苦手で怖い」「もし悪い結果が出たらどうしよう」と不安に思うのは、妊娠中の自然な心理です。検査の目的や、万が一の際にも万全の医療サポート体制が整っていることを知っておくことで、少しでもリラックスして日々の健診に臨んでいただければ幸いです。

不安を感じたときの相談窓口

健診の内容や血液検査の結果について気になること、聞き忘れてしまったことがある場合は、ひとりで悩まずにかかりつけの産婦人科クリニックのスタッフを頼ってください。 診察室で医師に直接聞きにくいことであっても、助産師外来や受付、健診後の個別カウンセリングなどの機会を利用して、助産師や看護師へお気軽にご質問いただけます。また、お住まいの自治体の保健センターや母子保健相談窓口でも、地域に密着した妊娠生活のサポートや相談を受け付けています。

医療法人社団しらかば会での妊婦健診の特徴

医療法人社団しらかば会が運営する「しばウィメンズクリニック」では、女性一人ひとりのライフステージに寄り添う専門クリニックとして、丁寧できめ細やかな妊婦健診を実施しています。完全予約制の導入や、プライバシーを重視したお呼び出しシステムを完備し、落ち着いた環境で診察を受けていただける院内環境を整えています。 当院は、JR山手線・京浜東北線の「田町駅」および都営三田線・浅草線の「三田駅」から徒歩5分という、東京都港区芝のアクセスしやすい好立地(池藤ビル3階)に位置しており、お仕事帰りや日常の合間にも無理なく通院いただけます。妊婦健診の血液検査に関する些細な疑問や、妊娠初期の体調の不安など、どのようなことでも安心してお気軽にご相談ください。 詳しい診療スケジュールや医師の略歴については、クリニック公式サイトにてご確認いただけます。

参考文献

この記事の監修者

しばウィメンズクリニック

院長・医学博士 劉 樺(りゅう かんば)

経歴
2007年3月:聖マリアンナ医科大学医学部 卒業
2007年4月~2009年3月:東京女子医科大学病院にて初期臨床研修 修了
2009年4月~2016年3月:東京女子医科大学 産婦人科学講座
2016年4月~2019年10月:東京ベイ・浦安市川医療センター 産婦人科
2016年10月~:東京女子医科大学東医療センター 麻酔科
2020年7月:みなとウィメンズクリニック 開設
2026年4月:しばウィメンズクリニック 開設
資格・所属
産婦人科専門医
日本美容内科学会 会員
母体保護法指定医
麻酔科標榜医
医学博士
臨床研修指導医

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