妊婦健診で行う子宮がん検診とは|時期・痛み・結果の見方を産婦人科医が解説|港区田町駅西口の婦人科|しばウィメンズクリニック

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妊婦健診で行う子宮がん検診とは|時期・痛み・結果の見方を産婦人科医が解説

妊婦健診で行う子宮がん検診とは|時期・痛み・結果の見方を産婦人科医が解説|港区田町駅西口の婦人科|しばウィメンズクリニック

2026年7月24日

妊婦健診で行う子宮がん検診とは|時期・痛み・結果の見方を産婦人科医が解説

妊婦健診で受ける子宮頸がん検診(細胞診)について、「胎児に影響はないか」「痛みや出血はあるのか」「もし異常が出たら出産はどうなるのか」と不安を感じる方は少なくありません。本記事では、産婦人科診療ガイドラインに基づき、検査の中身から結果の見方、異常時の精密検査、妊娠経過への影響までを産婦人科医の視点から整理して分かりやすく解説します。

妊婦健診で子宮がん検診を行う目的と位置づけ

妊婦健診の初期に行われる子宮頸がん検診は、妊娠を機に子宮頸部の状態を確認し、必要な場合に早期介入の判断材料を得るために実施される標準的な検査です。

これは、妊娠を機にはじめて婦人科を受診する女性が一定数存在し、それまで検診を受ける機会を逃していたケースが多いためです。社会人になってから定期検診の機会が乏しいまま結婚・妊娠を迎えた方にとって、妊婦健診のタイミングが数年ぶりの婦人科受診となることも少なくありません。こうした背景から、健診における子宮がん検診は、母体と胎児の双方を不測のリスクから守るための基本的なチェックとして位置づけられています。

妊婦健診の標準項目に子宮頸がん検診が含まれる理由

日本産科婦人科学会の指針において、妊娠初期の妊婦健診では母体合併症や子宮頸部の異常を早期に把握することを目的に、子宮頸部細胞診を標準的に実施するよう定められています。厚生労働省の案内でも、初期の検査項目の一つとして子宮頸がん検診が明確に示されており、多くの自治体で公費補助(受診票)の対象となっています。

ただし、公費補助の具体的な範囲や窓口での自己負担額は、お住まいの自治体や受診する医療機関によって異なる場合があります。詳細な費用や検査の組み合わせについては、自治体の母子保健担当窓口、または受診予定の医療機関にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

子宮頸がんと妊娠の関係

子宮頸がんは、20代後半から40代の比較的若い世代でも発症することがある疾患であり、妊娠・出産を計画・経験する年代と大きく重なるという特徴があります。そのため、妊娠中であっても子宮頸部の健康状態を正確に確認しておくことには極めて重要な意義があります。

公的ながん情報においても、子宮頸がんは検診による早期発見が何より重要であると示されており、妊娠中の検診もその大切な一環と言えます。妊娠中の検査と聞くと不安が先に立つかもしれませんが、万が一結果に異常がみられた場合でも、そのレベルに応じて段階的な対応が細かく決まる仕組みになっているため、検査を受けること自体に過度な恐れを抱く必要はありません。

妊婦健診で子宮がん検診を行う時期と頻度

妊婦健診における子宮頸がん検診は、妊娠初期の初回健診前後で1回行われるのが一般的です。できるだけ早い時期に子宮頸部の状態を正確に把握しておくことで、その後の妊娠経過と並行しながら、必要な経過観察や追加の対応を安全に検討しやすくなるためです。

なお、過去の検診状況や妊婦さん個別の事情によって対応が変わる場合もあるため、最終的な実施タイミングは担当医の判断に委ねられます。

一般的な実施タイミング(妊娠初期の初回健診前後)

子宮頸部細胞診は、妊娠8〜11週前後の初回または2回目の妊婦健診のタイミングで行われるのが標準的です。日本産科婦人科学会が発行する『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』でも、妊娠初期に子宮頸部のスクリーニングを行う流れが示されており、多くの医療機関がこの指針に沿って運用しています。

過去1〜2年以内に子宮頸がん検診を受けて異常がなかった場合の取り扱いは、医療機関の方針や妊娠経過によって異なります。直近の検診結果をお持ちの場合は事前に担当医へ共有し、今回の妊婦健診で重ねて受診する必要があるかを確認することをおすすめします。なお、助成の適用や具体的な運用ルールは、自治体や医療機関によって多少の差異があります。

妊娠中の検査回数と再検査が必要になるケース

妊娠期間中に行われる子宮頸部細胞診の回数は、通常であれば1回のみで完了します。ただし、初回のスクリーニング結果のレベルや個別の状況によっては、妊娠の経過中に追加の精密検査や再検査が必要になるケースがあります。

たとえば、初回の細胞診で慎重な経過観察が望ましいと判断された場合、妊娠中期や後期に再度細胞診を行い、細胞の変化や進行の有無を確認するスケジュールが組まれます。具体的な再検査のタイミングや方針については、ガイドラインに則って担当医が適切に判断します。

妊婦健診で子宮がん検診を行う時期と頻度

検査の流れと痛み・出血について

妊婦健診で行う子宮頸がん検診は、内診台でお産用のアプローチ(腟鏡)を用いて子宮頸部を視認したうえで、専用の柔らかい綿棒や細いブラシを用いて頸部表面の細胞を優しく擦過して採取する、非常にシンプルな検査です。

子宮頸部は腟の奥に位置する体表に近い部位であり、表面の細胞のみを的確に採取することで、母体への身体的負担を最小限に抑えることができます。採取に要する時間はわずか数秒から十数秒程度であり、麻酔や事前の特別な処置、入院などは一切必要ありません。

検査の手順(内診台での細胞診)

検査の具体的な流れは以下の通りです。

  1. 内診台に上がり、リラックスした状態で姿勢を整えます。
  2. 腟鏡(クスコ)と呼ばれる専用の器具を用いて腟内を優しく広げ、医師が直接、子宮頸部の状態を目視で確認します。
  3. 専用の綿棒やブラシを使い、子宮頸部の表面にある細胞を軽くなぞるようにして採取します。

細胞の採取自体に要する時間は数秒から十数秒程度です。妊娠中はホルモン環境の変化に伴い、子宮頸部や外子宮口の血流が非常に豊富になっているため、細胞を愛護的に採取した場合であっても、検査後にごく少量の出血を伴うことがあります。これは妊娠期特有の生理的な反応であり、決して珍しいことではありません。

痛みの程度と個人差

子宮頸部細胞診において、飛び上がるような強い痛みを伴うことは原則としてありません。多くの場合は、器具が触れる際の軽い違和感や、押されるような圧迫感として感じる程度です。

ただし、痛みの感じ方には個人差があり、これまでの婦人科受診に対する苦手意識や、当日の緊張の度合いによっても左右されます。体に過度な力が入ってしまうと、腟周囲の筋肉がこわばって器具挿入時の不快感が強まりやすくなるため、検査中はゆっくりと深呼吸を行い、肩の力を抜いてリラックスすることを意識してください。万が一、強い痛みや持続する痛みを覚えた場合は、我慢せずにその場で医師やスタッフへ伝えてください。

検査後の出血の有無と受診の目安

検査を受けた後、おりものに少量の血が混ざったり、茶色っぽいおりものが1〜2日程度続いたりすることがあります。これは、血流が増えている子宮頸部に器具が優しく触れたことによる一時的なにじみであり、基本的には心配のない範囲内です。

しかし、以下のような兆候が見られる場合は、細胞診の影響とは異なる別の要因(切迫流産や感染症など)が隠れている可能性があるため、自己判断で放置せず、速やかにかかりつけの産婦人科を受診してください。

  • 生理2日目の経血量を思わせるような、まとまった量の鮮血の出血がある
  • 激しい下腹部痛や、締め付けられるような腰痛を伴う
  • 出血が数日以上経過しても一向に止まらず、量が増えていく
  • 38℃前後の発熱や、悪寒を伴う
  • 破水を疑うような、サラサラとした水っぽい分泌物が出現する

子宮頸がん検診に用いる器具が胎児のいる子宮の内部(子宮内腔)に達することはないため、検査による軽微な出血が原因で切迫流産や流産が引き起こされることは原則としてありません。しかし、出血が持続する場合や不安が強い場合には、決してひとりで抱え込まずに医療機関を受診し、適切な診察を受けてください。

検査後の出血の有無と受診の目安

胎児への影響と『受けたくない』と感じたときの考え方

妊婦健診における子宮頸がん検診は、あくまで子宮の入り口(頸部)の表面細胞を取り出して調べる検査です。赤ちゃんが育っている子宮の内腔や胎盤に器具が直接触れることは一切ないため、検査そのものが胎児の発育や健康に直接的な悪影響を与えるとは考えにくいとされています。

どうしても不安が拭えない場合や、検査に対する強い抵抗感がある場合は、無理をして我慢するのではなく、事前にその胸の内を担当医へ率直に相談してみることをおすすめします。

細胞診による胎児への直接的影響

日本産科婦人科学会の『産婦人科診療ガイドライン産科編2023』においても、妊娠中の子宮頸部細胞診は、母体の安全とがんの早期発見のために必要な標準的スクリーニングとして位置づけられています。細胞診でアプローチする領域は子宮頸部の外側に限られており、胎児が包まれている空間とは解剖学的に厳密に隔てられているため、検査によって流産のリスクが直接的に高まるという医学的根拠はありません。

ただし、もともと切迫流産の兆候(絨毛膜下血腫や子宮収縮など)を指摘されている方や、過去に流産を経験されており精神的な負担が極めて大きい方など、個別の事情によっては実施の時期を少し遅らせるなどの柔軟な対応をとることもあります。該当する背景をお持ちの方は、検査が始まる前に必ず医師へ伝えるようにしてください。

不安が強い場合の医師への相談方法

検査の必要性や実施するタイミングについて不安がある場合は、検診を受ける前に医師や助産師へ率直に質問して構いません。医療現場において、妊婦さんが検査に対する不安を口にすることはごく自然なことであり、信頼関係を築きながら安全な妊娠管理を行うための大切なコミュニケーションの一環です。

診察時に確認しておくと安心できる具体的な質問例をまとめました。

  • 「過去1〜2年以内に受けた子宮頸がん検診では完全に正常でしたが、今回の妊娠初期にも再度受ける必要がありますか?」
  • 「過去に出血や切迫流産の経験があり不安なのですが、今回の検査時期をもう少し体調が安定する時期まで遅らせることは可能でしょうか?」
  • 「万が一、検査の後に自宅で出血が見られた場合、どの程度の量や状態になったらクリニックへ連絡すべきですか?」

疑問に思うことをあらかじめメモに控えて持参すると、限られた診療時間のなかでも聞き忘れを防ぎ、要点をスムーズに確認しやすくなります。

結果の見方|ベセスダ分類でわかること

子宮頸がん検診の結果は、世界的な標準基準である「ベセスダ分類」と呼ばれる段階的な判定様式で示されるのが一般的です。これは、細胞の細かな変化の度合いを正確にステージングすることで、その後の適切な経過観察のスケジュールや、必要な精密検査のアプローチを明確に決定するために用いられます。

ベセスダ分類とは

ベセスダ分類は、子宮頸部細胞診の報告様式として国内外の医療機関で広く採用されているグローバルな評価体系です。国内においては、日本臨床細胞学会が示すガイドラインに準拠した詳細な運用が行われています。

ベセスダ分類の大きな特徴は、細胞の状態を単に『正常か異常か』の二者択一で判定するのではなく、細胞の変化の度合いを段階的なグラデーションとして評価する点にあります。そのため、検査結果に『異常所見』と記載されていても、その臨床的な意味合いは分類の段階によって大きく異なります。「異常=即がん」というわけではなく、大半の異常所見は「がんになる手前の段階(異形成)」を指しているため、まずは冷静に結果を読み解くことが大切です。

各分類(NILM・ASC-US・LSIL・HSIL等)の意味

代表的なベセスダ分類のカテゴリと、その後に推奨される一般的な医療対応の方向性は以下の通りです。

分類表記 主な意味合い 今後の一般的な対応の方向性
NILM (ニルム) 正常な細胞であり、がん細胞や異型細胞を認めない状態 定期的な妊婦健診の継続(通常の経過観察)
ASC-US (アスクアス) 異型細胞は見られるが、良性変化か異形成か判断がつかない状態 HPV(ヒトパピローマウイルス)検査による選別など
ASC-H (アスクハイ) 高度な病変(HSIL)の可能性を否定できない異型細胞がある状態 コルポスコピー検査(拡大鏡精査)などの精密検査
LSIL (エルシル) ヒトパピローマウイルス感染や、軽度の異形成(軽度病変)が疑われる状態 コルポスコピー検査による詳細な観察と精密検査
HSIL (エイチシル) 中等度〜高度の異形成、または上皮内がんが強く疑われる状態 専門医によるコルポスコピー検査および慎重な管理
AGC (エージシー) 頸管腺細胞や内膜腺細胞などの腺細胞に異型が認められる状態 精密検査による詳細な原因特定
SCC / AdenoCA 扁平上皮がんや腺がんなどの悪性腫瘍を疑う所見 腫瘍専門医への紹介、詳細な精密検査と治療の検討

※上記の対応方針は一般的なガイドラインの枠組みであり、実際の診療においては、日本婦人科腫瘍学会の指針(子宮頸癌治療ガイドライン)に則り、妊娠週数や母体の全身状態を考慮して担当医が個別に対策を決定します。

妊娠中に結果を聞くときの心構え

検査結果の説明を受ける際は、以下の2つのポイントをあらかじめ念頭に置いておくと、過度な動揺を防ぎやすくなります。

  1. 結果用紙に「異常」やアルファベットのコードが記載されていても、それがただちに「がんを発症している」という意味ではないこと。
  2. 示された分類の段階(カテゴリ)によって、お産までの経過観察の方法や、産後に行う治療の緊急性は大きく異なるということ。

医師からの説明をしっかりとメモに控え、聞き慣れない専門用語がある場合はその場で質問し、正しく現状を把握することが不安を解消するための第一歩となります。

結果の見方|ベセスダ分類でわかること

ASC-US以上だった場合の精密検査の流れ

初回のスクリーニング検査(子宮頸部細胞診)において「ASC-US(アスクアス)」以上の判定が出た場合、必要に応じてHPV検査やコルポスコピー(拡大鏡検査)といった精密検査を組み合わせ、子宮頸部の状態を詳しく確認する流れが一般的です。

これは、ASC-US以上の所見であっても、その原因や病変の進行度には大きな幅があり、ガイドラインでも段階に応じた最適な検査の組み合わせが推奨されているためです。たとえば、ASC-USではまずHPV検査によってトリアージ(選別)を行い、ASC-H・LSIL・HSILなどでは最初からコルポスコピーを優先するなど、状況に合わせた確実な組み立てが行われます。

HPV検査によるトリアージ(ASC-USの場合)

ベセスダ分類でASC-USの所見が出た場合、子宮頸がんの主な原因となる「ハイリスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)」への感染の有無を調べる検査を行い、その結果に応じてその後の対応を決定するアプローチが、国内のガイドラインでも標準的な手順となっています。

日本婦人科腫瘍学会の『子宮頸癌治療ガイドライン2022年版』においても、ASC-USにおけるトリアージとしてのHPV検査は、コルポスコピーを行うべき症例と慎重な経過観察に留めてよい症例を明確に区別するうえで極めて有用であるとされています。一般的な方針の目安は以下の通りです。

  • ハイリスク型HPV陽性の場合:さらに詳しい病変の状態を確認するため、コルポスコピー等の精密検査が検討されます。
  • ハイリスク型HPV陰性の場合:一過性の炎症などによる変化である可能性が高いため、一定期間をあけた後の再検査による経過観察が検討されます。

妊娠中であっても、HPV検査自体は子宮頸部の細胞や粘液を軽く擦過して採取する流れとなるため、通常の細胞診と同等の安全性が確保されています。ただし、具体的な実施の可否や最適な時期については、担当医が現在の妊娠週数や母体の状態を踏まえて慎重に判断します。

コルポスコピー(拡大鏡検査)と妊娠中の安全性

コルポスコピーとは、コルポスコープと呼ばれる専用の拡大鏡を使い、子宮頸部の表面を数十倍に拡大して微細な血管のパターンや粘膜の変化を詳しく観察する検査です。このとき、より疑わしい部位が見つかった場合には、その組織をミリ単位でごく一部採取する「生検(組織診)」を組み合わせて行うことがあります。

診療ガイドラインでは、妊娠中であっても臨床的に必要(HSIL以上の強い病変が疑われるなど)と判断された場合には、コルポスコピーを安全に実施できるとしています。ただし、妊娠中の生検については、子宮頸部の血流が豊富になっていることによる出血リスクや、母体・胎児への精神的・身体的影響を慎重に考慮し、リスクとベネフィットを総合的に比較して個別に行うかどうかが判断されます。

実際の医療現場では、医師から説明を受ける際「いま生検まで行う必要があるのか」「治療を急ぐ病態ではないため、もう少し週数を進めてから(または産後に)再評価するのか」といった選択肢が示されることがあります。「リスクとベネフィットを正確に比較しながら最適なタイミングを探る」という前提を理解しておくと、医師との対話をより深めやすくなります。

検査結果が出るまでの過ごし方

精密検査を受けてから最終的な結果が判明するまでには、数日から2週間程度かかることがあります。この期間は結果を待つ不安からストレスを感じやすいため、以下の視点を持って過ごすことが心の安定に役立ちます。

  • まずは、信頼できる公的な情報源(日本産科婦人科学会や日本婦人科腫瘍学会の一般向け情報、国立がん研究センターの情報など)を中心に確認し、過剰な不安を煽るような不確かな情報から距離を置くことが大切です。
  • また、パートナーやご家族と現状を正しく共有し、ひとりで悩みを抱え込まない環境を整えましょう。
  • さらに、インターネット上の個人的な体験談だけでご自身の予後を判断しないことも重要です。体験談は背景にある症状や対応の幅が個々人で全く異なり、ご自身のケースとは条件が一致しないことが大半であるため、あくまで参考程度に留めておくのが無難です。

妊娠中の経過観察と分娩時期・分娩方法への影響

妊娠中に子宮頸部細胞診の異常(異形成など)が指摘された場合であっても、多くのケースでは妊娠中に急いで手術や積極的な治療を行うことはせず、慎重な経過観察を選択し、妊娠の継続と並行して定期的な再評価を行っていきます。

これは、妊娠中に医療介入を行うことによる母体や胎児へのリスクと、出産を終えて産後に治療を判断する場合のリスクを天秤にかけたとき、軽度〜中等度の病変であれば「お産を最優先にして経過観察を続けるほうが安全である」と判断されるためです。

妊娠中の経過観察スケジュール(一般的な考え方)

ガイドラインに則り、妊娠中の細胞診異常への対応は、所見のレベル(ベセスダ分類のカテゴリ)と現在の妊娠週数の組み合わせによって個別にスケジュールが組まれます。一般的な管理の流れは以下の通りです。

  • 軽度〜中等度の所見(LSILなど)の場合:妊娠中は数ヶ月おきにコルポスコピーの観察や細胞診の再検査を行い、病変が急速に進行していないかを見守ります。本格的な治療が必要かどうかの精密な最終判断は、産後落ち着いたタイミング(産後数ヶ月後など)へと持ち越されるのが一般的です。
  • 高度の所見(HSILなど)の場合:妊娠中もコルポスコピー等を用いてより慎重な頻度で経過を追い、細胞の性質を厳密にモニタリングします。現在の妊娠週数や病変の状態に応じて、婦人科腫瘍の専門医が在籍する高次医療機関(専門施設)とのスムーズな連携管理が検討されます。
  • 明らかな浸潤がん(悪性腫瘍)が疑われる場合:産科の担当医と婦人科腫瘍専門医による緊密な共同管理のもと、母体と赤ちゃんの安全を両立させるための高度に専門的な治療計画や分娩スケジュールの策定が、個別に徹底して行われます。

いずれのケースにおいても、妊婦さんご自身の体調を最優先に考えたオーダーメイドの管理方針が敷かれます。

分娩時期・分娩方法への影響(経腟分娩か帝王切開か)

「子宮頸部細胞診で異常が指摘されたら、必ず帝王切開になるのではないか」と心配される方もいますが、軽度〜中等度の異形成であれば、通常の経腟分娩を選択できるケースが大半を占めています。細胞の異常自体が、赤ちゃんの通り道やお産そのものに直接的な悪影響を及ぼすことは基本的にありません。

一方で、高度な病変やがん化の可能性が否定できない一部のケースでは、専門医が連携して以下の観点から最も安全な分娩時期と方法を慎重に検討します。

  • 病変の広がりや、子宮頸部における具体的な位置
  • 現在の正確な妊娠週数と、胎児の順調な発育状態
  • 母体に他の合併症(持病など)が伴っていないか
  • 出産を終えた後、産後のどのタイミングで速やかに次の検査・治療へ移行すべきか

経腟分娩か帝王切開かの最終判断はこれらを総合的に評価して決定されるため、画一的に「結果に異常があるから帝王切開」と決まるわけではありません。すべての選択は、学会のガイドラインに示された安全な枠組みに則って行われます。

産後の再検査・治療判断(円錐切除術等)

無事に出産を終えて一定の期間が経過すると、妊娠中に大きく変化していたホルモン状態が徐々に落ち着き、子宮頸部の組織の状態もあらためて正確に評価しやすくなります。

そのため、妊娠中に経過観察となっていた方は、産後の適切なタイミングで細胞診やコルポスコピー、必要に応じた生検(組織診)を再度行い、最終的な治療の必要性を見極めるのが標準的な流れです。もし産後の精査でも高度異形成(がんの手前の段階)などの持続が確認された場合には、「子宮頸部円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)」と呼ばれる、病変部のみを優しく切除する日帰りまたは短期入院での治療が検討されることがあります。

産後の再評価のスケジュールは、妊婦さんの母乳育児(授乳期間)の状況、月経の再開時期、そして新しい育児生活のライフスタイルなども十分に考慮しながら、無理のない範囲で計画されます。産後の健診案内が届いた際には決して自己判断で見送らず、妊娠中の細胞診の結果が記載されたデータを持参して、必ず専門医のアドバイスを受けるようにしてください。

妊娠中の経過観察と分娩時期・分娩方法への影響

妊婦健診の子宮がん検診に関するよくある質問

Q. 過去の検診で異常がなかった場合、今回スキップできますか?

A. 直近1〜2年以内に受けた子宮頸がん検診で完全に正常であった場合、今回の健診での取り扱いは、受診されている医療機関の方針や現在の妊娠経過によって多少異なります。しかし、妊娠中の初回健診における標準的なスクリーニング項目としてあらかじめプログラムされていることが多いため、自己判断でスキップするのではなく、過去の正確な検診時期や結果を担当医に伝えたうえで、今回受けるべきかを相談することが推奨されます。

Q. HPVワクチンを接種していれば検診は不要ですか?

A. HPVワクチンは子宮頸がんの主要な原因となるヒトパピローマウイルスの感染を防ぐ極めて高い効果が期待できますが、すべてのがん化リスクのあるウイルスの型(タイプ)を完全にカバーできるわけではありません。そのため、ワクチンをすでに接種している方であっても、定期的な子宮頸がん検診を継続して受けることが世界的に強く推奨されています。妊婦健診の場においても、過去のワクチン接種歴に関わらず、標準的な健診案内が行われるのが一般的です。

Q. 検査後の出血はいつまで続きますか?

A. 検査の後にごく少量の血が混じったおりものが出たり、茶色っぽい分泌物が1〜2日程度続いたりすることは、血流が豊富になっている妊娠初期において一般的な範囲内であり、過度に心配する必要はありません。ただし、生理2日目を思わせるような多量の鮮血の出血、強い下腹部痛、発熱、あるいは数日以上経過しても一向に出血が収まらないといった症状を伴う場合は、別の要因(切迫流産など)を考慮する必要があるため、早めにかかりつけの産婦人科を受診してください。

Q. ASC-USと言われたら必ずがんですか?

A. ASC-US(アスクアス)は「意義不明な異型扁平上皮細胞」という名称であり、これは細胞にわずかな変化(異型)はみられるものの、それが一時的な炎症によるものなのか、あるいはがんの手前の段階(異形成)によるものなのか、まだ判断がつかないグレーゾーンの状態を指します。したがって、ASC-US=がんを意味するわけでは決してありません。ガイドラインに沿って、その後にHPV検査などのトリアージや定期的な経過観察を適切に組み合わせることで、次の安全なステップを冷静に判断していくことができます。

Q. 妊娠中にコルポスコピーや生検をして大丈夫ですか?

A. 各種の診療ガイドラインに則り、高度な病変の可能性をしっかりと見極める必要があると医師が判断した場合には、妊娠中であってもコルポスコピー(拡大鏡検査)を安全に実施することができます。ただし、組織を一部採取する「生検」の実施に関しては、出血のリスクとお腹の赤ちゃんの安全を天秤にかけ、リスクとベネフィットを極めて慎重に比較したうえで個別に判断されます。検査の重要性や実施するのに最適な時期については、担当医から十分な説明を受け、納得したうえで臨むことができます。

Q. パートナーや家族にどう伝えればよいですか?

A. 検診の結果を伝える際は、「現在の正確な結果のレベル」と「次に予定されている具体的な検査や経過観察のステップ」を必ずセットにして共有することをおすすめします。そうすることで、ご家族の間で不安が根拠なく肥大化してしまうのを防ぎやすくなります。たとえば、「ASC-USという少しグレーな結果だったけれど、これはすぐにがんという意味ではなく、次にHPV検査という詳しい検査でしっかり白黒をつけるスケジュールになっているよ」というように、現状とこれからの見通しを一緒に伝えると、周囲も安心してサポートしやすくなります。不安な気持ちはひとりで抱え込まず、必要に応じて医師や助産師の助けを借りながら共有していきましょう。

まとめ|安心して妊婦健診に向き合うために

妊婦健診で行われる子宮頸がん検診は、日本産科婦人科学会や日本婦人科腫瘍学会の最新の診療ガイドラインに基づき、妊娠初期の段階で実施される安全で重要な標準スクリーニング検査です。

検査の結果は「ベセスダ分類」という世界基準によって段階的に評価され、それぞれの所要レベルに応じて、HPV検査によるトリアージ、コルポスコピーによる精密な経過観察、あるいは産後の落ち着いたタイミングでの再評価など、お母さんと赤ちゃんの安全を最優先に守るための洗練された医療体制がすでにしっかりと整っています。結果用紙に「異常」という文字が記載されていたとしても、それが即座に深刻ながんを意味するわけではなく、段階に合わせた次のステップが明確にガイドラインで整理されているため、過度な不安を抱え込んで思い悩む必要はまったくありません。

検査の必要性、実施するタイミング、あるいは判明した結果について少しでも疑問や不安があるときは、ひとりで抱え込まずに、健診の場で率直に担当医や助産師へご相談ください。正しい医学的知見に基づいたサポートを受けることが、安心して穏やかなマタニティライフを過ごすための大切な第一歩となります。

なお、東京都港区エリアで丁寧な妊婦健診や初期の子宮頸がんスクリーニング検査、妊娠中のデリケートな体調相談に対応している産婦人科をお探しの方は、しばウィメンズクリニック(医療法人社団しらかば会、東京都港区芝4-5-8 池藤ビル3階)までお気軽にご相談ください。当院はJR田町駅・都営三田駅から徒歩5分と通院しやすく、完全予約制およびプライバシーを重視したお呼び出しシステムを導入し、リラックスして受診いただける院内環境をご用意しています。診療担当は月・火・木・金曜日となっており、皆さまが安心して出産の日を迎えられるようスタッフ一同で温かくサポートしています。詳細はクリニック公式サイトにてご確認ください。

参考文献

この記事の監修者

しばウィメンズクリニック

院長・医学博士 劉 樺(りゅう かんば)

経歴
2007年3月:聖マリアンナ医科大学医学部 卒業
2007年4月~2009年3月:東京女子医科大学病院にて初期臨床研修 修了
2009年4月~2016年3月:東京女子医科大学 産婦人科学講座
2016年4月~2019年10月:東京ベイ・浦安市川医療センター 産婦人科
2016年10月~:東京女子医科大学東医療センター 麻酔科
2020年7月:みなとウィメンズクリニック 開設
2026年4月:しばウィメンズクリニック 開設
資格・所属
産婦人科専門医
日本美容内科学会 会員
母体保護法指定医
麻酔科標榜医
医学博士
臨床研修指導医

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